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「あん? だってお前が言ったのって『メイド喫茶でご主人様って呼ばれてみたいけど恥ずかしいからお前もついてきてくれよ』って話だろ?」
「違ぇよこのバカ! 俺の話をどう解釈したらそんな結論になるんだよ!」
セツナは大声で突っ込みつつシグレの思考回路のねじ曲がりっぷりに辟易する。
シグレはバレー部に所属しているセツナとは違い生粋のインドアというべきか、言葉を選ばずに言えば『オタク』的な趣味を持っている。そのためメイド喫茶なども頻繁に利用しているようだが、セツナの本来の意図にはかすりもしていない。
シグレはアニメ、ゲームなど幅広いオタク文化に精通しているのだが、実はセツナの趣味と共通している部分がある。それこそがセツナとシグレが友人関係を続けている理由であり、今回セツナがシグレに声をかけた理由でもあったりする。ちなみにメイド喫茶とは一切関係がない。
――と。
「あはは、相変わらず二人は仲がいいね」
春の風かと錯覚するほど爽やかな声が二人の鼓膜を駆け抜けた。
「出たなイケメン」
シグレがじろりと振り返る。セツナも声をしたほうに目を向けると、そこには美男子を体現したような少年が立っていた。
生粋の日本人であるにも関わらず髪は綺麗な金髪で、肌は驚くほどに白い。しかし華奢な体型かと言われればそんなことは決してなく、美術的な美しさすら感じさせる男性的な体つき。
この美男子を具現化したような少年の名は笠原ケントといい、セツナ、シグレの級友である。この三人はなぜか気が合い、学校にいるときはもっぱらこの三人でつるんでいた。
よって昼休みもこの三人で過ごすことが多いのだが、生粋のイケメンであるケント様を独占しているセツナとシグレに今も女子の嫉妬の視線が突き刺さり続けていることに当のケントだけは気付いていない。
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