仮想世界の箱庭へ②

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××× 「とりあえず着てみたけど……」 「ぶっはははははははは! やべえ! 超似合う! セツ子ちゃん!」 (よし、こいつは後でぶっ飛ばそう)  女装した姿を見るなり笑い転げたシグレを見てセツナはそう決意した。 「でも、すごくお似合いですよ。カツラまで、一体どこで?」 「このお屋敷、服装関連のものはいっぱいあったからね。セツナに似合いそうなものを持って来たんだ」 「余計なことを……」  ケントに毒づくセツナだが、残念ながら他の三人の言葉に嘘は一切ない。   もともと華奢な体格だったせいか女ものの服も普通に切られたし、ドレスの裾から覗く足もスポーツをやっていた影響かほっそりとひきしまっていて見栄えがいい。  顔立ちももともと女顔だったため、今のセツナは街に出ればナンパ被害に悩まされそうなくらい可憐な少女に変貌を遂げていた。 「いいねえセツナ! あ、こっちにも目線くれよ。できればちっとスカートの端を持ち上げてくれると」 「せあっ!」 「うおわああああ! って、カメラが真っ二つに! 何てことしてくれんだ!」  ちなみにセツナの内心はわりと荒れている。 「もういい、ここまで来たらやってやる! この格好で『婚約者です』って言ってケントを紹介すればいいんだろ!? ほら、行くぞケント!」 「わっ、引っ張らないでよセツナ……セツ子」 「やめろその呼び方!」  もはややけくその境地に片足を突っ込みながらセツナはずんずんと大股で町長の元に歩いて行った。 「……お、『お久しぶりです。お爺様』」  セツナは町長の前に来ると、ミアの時同様シグレが書いたカンペを見ながら棒読みで言った。 『君は……ローラ? もしかして、ローラなのか!?』  と、これまでで一番の反応を町長が見せた。がっと立ち上がり、つかつかと歩み寄って女装したセツナを間近で凝視する。  しばらくセツナの顔をじっと見ていた町長だったが、不意に眉根を寄せた。 『む? だが、私の知る娘とは違うな』 (ぐっ、やっぱり男が女装しただけじゃ無理があるか……)  セツナはぐ、と喉を鳴らした。
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