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先輩はやはり、美術室に来なかった。 舞川さんも来ていない。 絵を夢中で描いているときには頭の隅に追いやられているそれらは、集中が途切れて美術室を見渡した時、最終のバスに揺られて人数が少なくなってきた時にふっと思い出され、私に小さなため息をつかせた。 悲しいとか苦しいとか、そんな重々しいものではない。 ただ、先輩と会わない日が続けば続くほど、心にぽっかり穴があいてしまったかのような気持ちが募った。 一緒に木の枝や葉っぱを探しに行ったこと、美術室ででたらめな絵を描いたこと、バスでいろんな話をしたこと、お母さんにモデルの件で謝ってくれたこと。 まるで、そんなことなんてなかったんじゃないかと思えてくるほどだった。
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