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あ……それって、もしかしてミサキさんのことがあったから、私が危害を加えられないようにって距離を置こうとして……?
「あのとき、水島さんにイジワルしたくなったから、ウソついた」
「……」
イジワル……?
てんで予想していなかった言葉に、私の頭は一瞬フリーズした。
「な……なんでですか?」
「なんでだろうね」
本当にわからないのか、それともどうでもいいのか、桐谷先輩はまた、ハ、と短く笑う。
そして、
「なんかね、見せたくない。水島さんには」
と言った。
なんだかとてつもなく衝撃的なことをさらりと言われて、私の足はその場に固定されたかのように硬直した。
「じゃあね」って言って3丁目のほうへ歩き出した先輩の後ろ姿。
私は、その影が角を曲がるまで、身動きひとつ瞬きひとつできずに佇んでいた。
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