第14話

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私達以外の3人がそれぞれの方向へ帰っていく中、私はさよならを言う前に自宅の方向を指差して桐谷先輩に示す。

先輩が帰る3丁目は反対の方向だ。

「うん」

体半分で立ち止まり、私が指差す方向を見る先輩。

バス停横の植え込みの緑が揺れる。

空ではまだらな雲たちがいくぶん早く通り過ぎていく。

真昼間なのに、周りが急に静かになった気がした。

緑色の前で、私の制服と先輩のシャツの白がはためいて、目を合わせて動かないまま数秒過ぎる。

ふいに美術室でふたりきりになって見つめ合ったあの場面が甦ってきて、私はひとりで勝手に恥ずかしくなって目を逸らした。

明日から……夏休みなんだ。

しばらく本当に、会えなくなるんだ。

じわっとその事実が胸に滲んだ私は、「じゃあ」と言いかけた先輩を見て、咄嗟に「あ」と言って呼び止めていた。