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「……」
ボソリと呟くようにもらした桐谷先輩に、私は言葉を失った。
いろいろと確かめたいことは山ほどあるのに、飴の袋のひとつをつまんでぼんやり眺めている彼を前に、何から聞けばいいのか混乱する。
「……なんでキス……したんですか?」
かろうじて出した声はかすれていた。
私の声よりも、鳴り響く心臓の音のほうがよっぱど大きい。
飴を眺める先輩は、その問いに対して視線も姿勢も変えないまま、
「したかったから」
と、軽く言ってのけた。
「なにそれ。……じゃあ、なんで“ごめん”とか」
「だって、するつもりじゃなかったのに、魔が差したというか、思わずというか」
「まっ、魔が差したとか最低」
「だから謝った」
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