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ようやく立ち上がった先輩は、自分のキャンバスを眺める。
上から下までゆっくり視線を移してはまた往復して見上げ、それを時間をかけて数回繰り返した。
「……まぁ……うん、…………そっか」
独り言のようにそう呟いた後、今度は斜め前で佇んだままの私へと静かに視線を向ける先輩。
「で、結局、あの男の子は何なの? さっき彼氏になったわけ?」
「はっ? ちっ、違います」
急に転換された話題に面食らった私は、力んでそれを否定する。
「なんだ、告られたんじゃなかったんだ」
「1学期に……告られたけど……断りました」
「ふーん」
「……」
「なん」
「なんで? とか聞かないでください、わざと」
「ハ」
くしゃっと屈託なく笑った先輩。
口角を上げたままで、1歩、2歩……と私に近付いてくる。
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