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目の前まで来られると、その影に妙な圧迫感を感じて、私のほうが半歩下がってしまう。 すると膝の後ろが椅子に当たって、ペタンとそのまま腰を下ろしてしまった。 私を真ん中にして、囲むように机にかけられた両手。 触れられずして逃げ場を失ったこの状況に顔を上げると、すぐそばに桐谷先輩の顔があって前髪同士が触れた。 さっきから感情の起伏と振れ幅がハンパない。 私だけが動揺して緊張して、まるで手の平で遊ばれているかのようだ。 「ずるい」 接近してくる先輩に、私は斜め下に顔を伏せる。 「なにが?」 なおも動じずに、私の俯けたつむじに自分の額をくっつける桐谷先輩。 「私がどんな気持ちで、こっ、告白したり、諦めたりしようとしてたか、知らないくせに」
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