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私には、色がなかった。 対象物の色を忠実に塗るように、この色がいいって言われたらその助言のままに塗るように、最初から諦めては楽なほうに流されていた。 だから表情も言動も崩したくなかった。 だって、崩したら感情まで雪崩れを起こしてしまうってわかってたから。 でも、高校生に上がって憧れだった“桐谷遥”に出会って、それが一変した。 ずる休みを覚えた。 めちゃくちゃな絵を描いた。 人を好きになったし、告白もした。 お母さんに本音を伝えられた。 笑ったり、怒ったり、泣いたりもした。 完璧な人なんていないんだってことを学んだ。 “きっかけ”は、待つものじゃなくて作るものだと知った。 私は自分の色を開放することで、今まで持っていなかったたくさんの色を手にすることができたし、それらの色を足して無限の色が作れることを知ったんだ。
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