《番外編》放課後桐谷宅

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けれども、祖母はそれをいい目では見ていなかった。 父親と同じ医者を目指してほしいと思っていたようだから、勉強以外のことに夢中になる俺が許せなかったのだろう。 一方で父親は、むやみに押し付けたり否定したりする人間ではなかったのが救いだった。 彼は画材を揃えてくれたり絵を描く環境を整えてくれたりして、祖母の文句も「子どものため、というのに俺たちの都合や世間体をこれ以上介入させたくない」と一蹴した。 好きなことを好きなだけさせてくれた。 今となって思えば、父子家庭だということや、なかなか時間を作ってやれないということに対する罪滅ぼしだったのかもしれないけれど、それでも俺は、彼が自分の父親だったことに心から感謝している。
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