序章『目の前に突然アイドルが』

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この日のどかな風景を色濃く残す小さな離島に住む女子高生の上条杏奈が愛犬のシロを連れて散歩していると、突如後ろから何者かが声をかけてきた。 「かわいい犬だね、男の子? 女の子?」 「男の子です」 突然の聞き覚えのあるその声に驚きながらも振り向き応えた杏奈だが、目の前に現れた思わぬ人物に再び衝撃を受けていた。 「えっうそ! 遥翔?」 そこには何と人気絶頂のスーパーアイドル、遥翔がたっていた。 「えっなんで、撮影か何か、いつ来たの、他のスタッフのみなさんはどこにいるの?」 矢継ぎ早に質問攻めにする杏奈に爽やかな笑顔を浮かべながら返事をする遥翔。 「さっき島に着いて民宿にチェックインしたとこ。ここ良い所だな、景色もいいし空気もきれいで都会とは大違いだ」 言いながら優しくシロを撫で回す遥翔。 「この子ほんとかわいいね、名前はなんていうの?」 遥翔の問い掛けに対し突然の大スターの登場にドキドキしながら応える杏奈。 「シロって言います。ありきたりな名前ですよね」 「そんな事ないよ、可愛い名前じゃない。そうシロくんて言うの。ほんと小さくて真っ白い毛がふさふさして可愛いなぁ? それによく手入れされている、すごくかわいがっているのがわかるよ。初めましてシロくん」 遥翔が再び撫で回すと、本来人懐こいシロも当然の様に一瞬にして遥翔に懐いていた。 (かわいいけどきっとこの犬は番犬としては失格だろうな?) そんな中隣で杏奈は依然として遥翔の出現に驚きつつも疑問を感じていた。 「でもほんとどうしたんですか? こんな何もない田舎の島にテレビの撮影なんか来るわけないし」
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