序章『目の前に突然アイドルが』

3/9
前へ
/244ページ
次へ
「さっきから何言っているの? テレビじゃないよ」 「そうなの、じゃあ何ラジオかなにか?」 「そんなんでもないって」 「だったらなんなの? なんであの大スターの遥翔がこんなとこにいるの?」 「ちょっとサボり、毎日仕事が忙しくてね。それでいてマネージャーが休みをくれないから勝手に仕事を抜け出してきちゃった」 遥翔の思わぬ告白に杏奈は思わず驚いていた。 「ダメじゃないそんな事したら、みんなすごい探しているよ。心配もしているだろうし」 「でももうデビューしてから五年以上まともなオフをもらってないんだぜ」 「だからってこんな事をしたらそのうち仕事貰えなくなっちゃうよ」 「かもな。でも今日一日だけ、明日には帰るから」 この時杏奈は、呆れた様な表情を浮かべつつも同情の思いが込み上げてきた。 (やっぱり芸能人て大変なんだな? 五年以上も休みをもらってないなんて) 「しょうがないなぁ、分かったわ、心配しないで黙っていてあげるから。まぁどっちにしろあたしが連絡したくても事務所の連絡先が分からないけどね」 「ありがとな。助かるよ」 ほっとする遥翔であったが、直後杏奈の放つ意地悪な一言によって再び不安に駆られていた。 「あっでもそうでもないか、今はSNSっていう方法があるし。あたしツイッターやってるのよねぇ」 「おい脅かすなよ、そんな事しないよな?」 遥翔の言葉に笑顔を浮かべ返す杏奈。 「大丈夫よ、冗談だから安心して、ちょっと意地悪言ってみたくなっただけ。あたしがそんな事する訳ないじゃない。それに今の遥翔の姿を撮った写真でも載せない限り信じる人いないわよ」
/244ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加