第1章 馬鹿が勇者になるらしい

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「俺は勇者になりたい」 先ほどから彼は何を言っているのでしょうか?16歳にもなり、家の仕事を手伝わず、冒険者ギルドにも入らない。挙句に修行をすると嘘をつき、私のスカートの中を覗こうとしたり、風呂を覗こうとしたり、トイレを覗こうとしたり、ニート兼犯罪者みたいな生活をしている人が。 「ちょっと、土に還ってもらえませんか?」 「久々に会話したと思ったら、土に還れって酷くない?俺ら三日間喋ってないんだよ?それにちょっと土に還れの『ちょっと』って何?どこまで土に還ればいいの?」 「頭だけでいいんでちょっとだけ土に還ってください」 「結果的に全部土に還るよね?」 「お得ですね、良かったですねー」 話が長くなりそうなので、私はいい加減な返事をすることにしました。 「・・・まぁいい。俺は勇者になりたい。だが、俺一人のチカラでは魔王を倒すことはできない。頼む・・・チカラを貸してくれ・・・・」 「嫌ですね。」 私は考える間も無く、本能的にそう答える。あと、さっきと同じ台詞言ってますよね? 「勇者になって魔王を倒すんだ!!」 高らかと宣言する彼に、先ほどから距離をとっていた村人がより一層距離をとった。村長は絡まれている私を見て苦笑いを浮かべています。 見てないで助けてください。苦笑いを浮かべないで助けてください。 「魔王、魔王って言いますけど、魔王って300年前に勇者が倒して今はいませんよね?」 先ほどから彼は魔王、魔王と言っているが、魔王などこの世にいません。存在していたのは約300年前の話です。 300年前に人間と魔族が戦争していましたが、勇者ランスロットが魔王サタンを倒したおかげで、当時暴れていた魔族達が一斉に大人しくなりました。 実は魔族達は元々温厚な性格で、魔王サタンが洗脳した事により、凶暴になっていただけだったようです。今となっては、魔族と人間が共存している町が存在するほどです。 「確かに魔王はいない。だが、300年も経ったんだ。もうそろそろ出てきてもおかしくない。現れてからでは、もう遅いと思う。だったらフルパワーで現れる前にあぶり出し、ボコボコにしてやればいい。」 こいつ、魔王より魔王の素質があると思います。
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