第2章

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「え、多紀さんって26歳なの?」 途中、ふとお互いの年の話になって。もっと年上だと思っていたと、青羽がびっくりした顔になる。 「青羽くんはいくつなんだ?」 「25ですけど」 今度は俺が驚いた。彼はせいぜい22か23くらいだと思っていたから。 大学を出てから海外で何年 も生活をしていると言っていたんだから、気づきそうなものだが。 「俺、そんなに子供に見えますか?」 そう言った青羽が唇を尖らせる。その顔がまた妙に子供じみて見えた。 「2月になれば26です」 「――じゃあ、同学年か?」 お互い目を合わせて、次の瞬間、二人くすくすと笑いが零れる。 「誰が見ても、俺たち同い年には見えないでしょうね」 お代わりした熱いお茶のカップを抱えて、彼が言う。 「片やフリーターの風来坊、片や天下の国家公務員でちゃんと結婚してる」 彼の視線が、俺の薬指に流された。 「奥さん、心配じゃないんですか?こんなイイ男、単身赴任させて」 またも指輪を気にされて、ちょっと返事に困った。心配されるようなことはないと、当たらず触らずの言葉を返す。 「君こそ、もてるだろう?」 バリハイを一口含んで、話を振る。 「え、そんなことないですよ。俺なんて安全パイで」 彼が顔の前でふるふると手を振った。 話題も豊富でそつがない。青羽の言動の端々に、女性の扱いには慣れているんだろうと思わせるものが垣間見えて。 君といればきっと女性もきっと楽しいだろうと言うと、そうですかねと彼が軽く笑い返した。 「どうもごちそうさまでした」 店の外で青羽がぺこりと頭を下げる。 「いや……久しぶりに俺も楽しかった」 それは社交辞令ではなく、本音。 思えば大学を出てからというもの、付き合いがあるのは仕事関係の人間とばかりで。全くのプライベートでこんな風に話すのは、久しぶりの事だった。 「よければまた一緒に食事してくれないか?」 思い切って口にしてみた言葉。瞬きした大きな瞳に、馴れ馴れしかったかと思い直した。 「俺なんかの相手じゃつまらないかもしれないが……」 「いえっ!ぜひ!」 勢い込んで言われて、ほっとする。 「あ、もしよければ、今度は俺が料理しましょうか?得意なんです」 そう持ちかけられて。深く考えないまま頷くといつの間にか次の約束が決まってしまっていた。
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