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優子「……寝返りしねーからこうなんだぞ?」
山爺「はぁ、そうは言っても寝た後の事は分からんでよ」
優子「それで尻の皮めくれちゃ世話ねーだろうが」
優子さんは大きくため息をついた。山爺は今日から入居したお客さんだ。信じられない事に優子さんはカルテ(利用する高齢者の資料)と本人を見て早速あだ名を付けてしまった。
ジョン太郎(この人の距離感は本当にスゴイです……)
会って数時間、既にベットの横に座りタメ口で世間話しが出来るのは良くも悪くも優子さんぐらいだろう。失敗談の一つもあれば別だろうが、優子さんはそんな一般に"無礼者"で"年上を敬わない"態度でありながらなぜか皆の心を掴んでいく。
一方ボクはといえば先日も海老婆(優子さん命名。背中の曲がったおばあちゃん)に食事の配膳をしただけで……
海老婆「また来たね黒いの!!まさか毒でも仕込んで無いだろうね。言っとくけど私の旦那は戦争じゃ黒人の戦闘機を何百台も堕とした天才飛行機乗りで……」
ガツガツと飯を掻き込みながら海老婆が言う。
ジョン太郎(増えたなぁー。初めは確か10機だったのに……)
ジョン太郎「そんなに急いで食べると喉に詰まりますよ?」
ボクはそう言ってご飯を小皿に移した。こうする事で少しペースを落として食べて頂く作戦だ。
ジョン太郎(嚥下……飲み込みもだいぶ悪くなってる。そろそろ食形態も考える時期だな……)
海老婆「またまどろっこしい事して……なんだい?小皿に装ったぐらいであたしゃてなづけられんよ!?なんたってウチの爺さんは昔素手で虎を倒した……」
ジョン太郎「そんなつもりはありませんよ……」
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ジョン太郎「と言う具合で……猿を追い払った話が今では虎です」
それはお婆さんとボクの溝の開きだろか?
優子「くだんね……言ったろ?黒人ってのは不利なんだ。愚痴るより努力しな!」
ジョン太郎「はい……」
優子さんは答えはくれない。でも、優子さんは言った。
優子「海老婆はあんたに任せる。出来るからお前に任せるんだ。やれ」
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