1ー1

3/10
前へ
/348ページ
次へ
私の優しい主人の計らいだ。 普段、仕事で忙しい主人はせめて私の実家から近いところに住もうと気遣ってくれたのだ。 自分の職場から近いとかは二の次で… 「樹さんみたいな人、ほんと姉ちゃんには勿体無いな」 五つ離れている弟の晃が私の顔を見る度に言う常套句(じょうとうく)だ。 …自身そう思うので、毎回のように言い返せない。 まあ、代わりに手か脚は出す。 樹とは今から七年前に出会い、その一年後に結婚した。 そして、私は五十嵐 灯から柴本 灯になったのだ。 主人の仕事は忙しいけれど、その分収入は良く私が働かなくて充分に生活していける。 子供たちが少し大きくなってきたら働く事も考えたいが、今のところはその考えはない。 家は実家から近いところにあるし、金銭面でも困らないうえに夫は優しい。 更に二人の子供にも恵まれ、正直「幸せです。私」と断言できるくらいだ。 現在、望みがあるとすれば「この幸せがいつまでも続きますように…」だろうか。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

253人が本棚に入れています
本棚に追加