プロローグ

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…思えば馬鹿が付くほど、修一はお人好しだった。 私が柳 修一と出会ったのは、ある食品専門商社で派遣社員として営業事務の仕事をしていた時だ。 当時、私は25歳で修一は私より五つ年上の30歳だった。 出会ったといっても、単に修一はその商社の営業社員で、私は派遣社員として働いていただけであり、彼とは仕事で絡む程度でしばらくは特に仲良くなる事はなかった。 私が修一と急接近したのは、その会社で働き始めて半年くらい経ったある日、仕事場で上司に酷く怒られている修一の姿を見かけた事が始まりだった。 ◯ 「見た?朝っぱらから柳さん、めちゃくちゃ怒られてたよね?」 私はアジフライ定食のアジフライを箸でつつきながら、向かいに座る同僚に言った。 昼休みに食堂で同じ営業事務の仕事をしている派遣社員の女性と一緒に昼食をとっていて、そこでふと今朝の話を切り出したのだ。 「見た見た。柳さんでしょ?あれは格好悪かったよねー?」 同僚はその時のことを思い出して、クスクスと笑った。
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