プロローグ

3/11
247人が本棚に入れています
本棚に追加
/348ページ
「うんうん、見ているこっちまで恥ずかしくなるよね。たしか、あの人って前も怒られてなかったっけ?」 箸を右手に持ったまま、その手を(あご)に付けて、以前も彼が怒られていた事を思い出す。 「ていうか、しょっ中じゃない?あの人って、結構どんくさ…」 目の前の同僚の言葉が急に途切れた。 同僚の視線は私の背後に向けられていて、それを見た同僚は箸を持ったまま固まっていたのだ。 恐る恐る振り返る。 すると、そこには私達と同じ営業事務の仕事をしている女性社員が立っていた。 げっ… 彼女は私たち派遣社員の仕事を指示したり、確認したりしている言わば私たちの監督者だ。 その普段から厳しい彼女が怒ったような面持ちで立っているではないか… …きっと今の話を聞かれていたのだろう。 最悪だ… 彼女は柳さんと同期で普段からよく話をしている姿を見かける。 きっと、私たちが彼を馬鹿にしているのを聞いて、怒っているのだ。 私は直接、彼女から怒られた事はないが、よく周りの派遣社員が怒られているのを目にする。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!