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「柳さんの願い?何を根拠にそんな事を…!」
彼女の疑いに私はショルダーバックの中から手紙を取り出した。
修一からの最後の手紙を…
そして、それを彼女に渡す。
「…これは?」
彼女が私に訊く。
「私が全てを知ってしまった時に、修一が私に読ませようと書いた手紙。五年前に退院して、二葉とマンションで暮らすようになった時に書いたみたい。…その手紙の最後の方にはあなたの事が書かれているのよ」
私の言葉を聞いて、秋元 鈴菜が手紙を開ける。
「…私が読んでもいいんですか?」
彼女は読む前に私に確認する。
「ええ、勿論。あなたにもその権利はあるわ」
私の許可を得た彼女は手紙に目を通し始め、そしてその場に沈黙が流れる。
私も二葉も彼女が手紙を読む姿をただ黙って見守った。
彼女が最後の一枚を読み出した時、明らかに表情が変わる。
そして、彼女の眼からは涙が流れていた。
「…悔しいくらいあなたへの愛が綴られている。でも、柳さんが私の事もこんなに気にしてくれていたなんて…」
「自分がもう死ぬかもしれないって時にでも、人の心配ばかりしている。…あの人はそんな人よ。…だって馬鹿が付くくらいお人好しなんだから…」
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