プロローグ

5/11
前へ
/348ページ
次へ
「…といっても、今回の事は最終的にはあなたのせいではないけどね」 「えっ…?」 彼女の意外なほどに優しい口調を聞いて、思わず顔上げて彼女に視線を戻した。 「確かにあなたは入力ミスをしたけど、営業先に提出する前に確認を怠ったのは彼だから、怒られたのは自業自得。私があなたにその事を言わなかったのは、普段からあなたを評価しているから、こんな事でモチベーションを下げたくなかったの」 どうしても普段、怒っている彼女ばかり見ているせいか、彼女がこんな表情で優しい言葉を発するとは、目の前の女性は別人なのかと思えてくる。 おそらくこれが素の彼女なのだろう。 「…だけど、あんな風に同期の悪口を聞いてしまうと、なんだか黙っていられなくなって、ついつい言いたくなったの。彼が怒られているのは大抵、誰かを(かば)っている時だから」 「そうなんですか!?私はてっきり柳さんがどんくさ…」 私は思わず鈍臭いと言い掛けて、慌てて口を手で塞いだ。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

252人が本棚に入れています
本棚に追加