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「…といっても、今回の事は最終的にはあなたのせいではないけどね」
「えっ…?」
彼女の意外なほどに優しい口調を聞いて、思わず顔上げて彼女に視線を戻した。
「確かにあなたは入力ミスをしたけど、営業先に提出する前に確認を怠ったのは彼だから、怒られたのは自業自得。私があなたにその事を言わなかったのは、普段からあなたを評価しているから、こんな事でモチベーションを下げたくなかったの」
どうしても普段、怒っている彼女ばかり見ているせいか、彼女がこんな表情で優しい言葉を発するとは、目の前の女性は別人なのかと思えてくる。
おそらくこれが素の彼女なのだろう。
「…だけど、あんな風に同期の悪口を聞いてしまうと、なんだか黙っていられなくなって、ついつい言いたくなったの。彼が怒られているのは大抵、誰かを庇っている時だから」
「そうなんですか!?私はてっきり柳さんがどんくさ…」
私は思わず鈍臭いと言い掛けて、慌てて口を手で塞いだ。
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