プロローグ

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すると、彼女はクスッと笑った。 「…確かに柳くんは一見鈍臭そうに見えるかもしれないけど、ああ見えて割としっかりしているし、仕事も出来るのよ。…でも、一つ欠点があるけどね」 「欠点って何ですか?」 そう訊くと、彼女は思わず苦笑した。 「お人好し過ぎるとこ」 私も思わずクスッと笑ってしまう。 「…確かに柳さんって優しそうですもんね」 直接、その優しさに触れた訳ではないが、なんとなく私の中のイメージはそうだった。 「単に優しいだけならいいんだけど、あれは完全なお人好し。だから、毎回ように誰かの厄介ごとを引き受けては、ああやって怒られている訳。決して彼が鈍臭いから怒られている訳ではないのよ」 …知らなかった。 それなのに、私たちは勝手に悪口を言ったりして…彼女が怒るのも無理ない。 「すみませんでした」 私はそう言って、彼女に頭を下げた。 「謝る相手が違うんじゃない?」 彼女はそう言って席を立ち、優しく私の肩を叩いて、背を向けながら私に手を振り立ち去った。
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