第1章

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「出版元にはあるようですので、 お取り寄せいたしますか?明後日には届くと思いますが」 「そうですね、 お願いします」 「では、 こちらにご連絡先をお願いできますか」 差し出された取り寄せ依頼票に、 名前と住所を書き込む。 ペンを動かす手元に彼の視線を感じて 、 なんとなく落ち着かなかった。 「電話にあまり出られないかもしれません。 その時はこちらから折り返しますので」 「あ、 はい。 分かりました」 ありがとうございました、 とかけられた声に振り向けば、 彼が満面の笑みで見送っているから。 思わずこちらも微笑んだ。 きっと誰にでも平等に向けられているのだろう、 彼の笑顔。 それを独占している女性もいるんだろうな――と、 なぜかそんな事をふと思った。
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