第1章

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「デートか?」 「違う。 ちょっと用だよ」 「……のわりには、 なんか顔が緩んでるぞ」 軽くかわしたつもりが面白そうな顔で突っ込まれて、 反射的に手が口元に上がった。 同僚のにやにや笑いが大きくなる。 「え?図星か?」 「違うって……取り寄せの本が届いたから……」 嘘ではないし何も疚しいことなどないはずなのに、 何故か意思に反して顔が熱くなってくる。 まあ頑張れよと訳知り顔に頷いてくる同僚に、 お先と乱暴に言い捨てると部屋を出た。 からかわれてむっとしていた気持ちはしかし、 車のハンドルを握る頃にはすっかり消えてしまっていた。
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