第1章

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「いらっしゃいませ!」 書店にはいると、 彼が真っ先に声をかけてきた。 いつもの明るい笑みに、 こちらもつられる。 「メッセージをありがとうございました。 ちょうど車の運転中だったもので……」 なんとなく言い訳がましくなって言葉が途切れる。 いいえ、 と彼がくったくなく笑った。 本を受け取りかけて。 この間鉢に蒔いた花のことを、 ふと思い出した。 そう言えばどうも上手く育たない。 園芸の本でも買ってみようかと思いつく。 「他に見てきたいものがあるので、 ちょっと預かっておいてください」言い置いて、 普段は行ったこともない園芸関係の書棚の前に立った。
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