第1章

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「どけッ!」 ナイフを振りまわした男が、 店内を走ってくる。 その後ろから追いかけてくるのは、 彼だ。 俺と目が合った途端、 彼の顔に動揺が走った――次の瞬間、 制止する暇もなく彼が男に飛びかかった。 男と揉みあって床に倒された彼に、 さっと背筋が冷えた。 肘が鳩尾に入っただけらしいと 見て取って、 ほっとする。 盲滅法ナイフを振り回してくる男の手首を掴むと、 後ろに捻り上げた。 難なく床に押さえ込んで警察手帳を出す。 途端に男が静かになった。 すぐにサイレンの音が近づいてきて、 見知った顔が飛び込んでくる。 「多紀!」 「ナイフはそこだ」 少し離れたところに転がっているナイフを顎で示した。
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