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「どけッ!」
ナイフを振りまわした男が、
店内を走ってくる。
その後ろから追いかけてくるのは、
彼だ。
俺と目が合った途端、
彼の顔に動揺が走った――次の瞬間、
制止する暇もなく彼が男に飛びかかった。
男と揉みあって床に倒された彼に、
さっと背筋が冷えた。
肘が鳩尾に入っただけらしいと 見て取って、
ほっとする。
盲滅法ナイフを振り回してくる男の手首を掴むと、
後ろに捻り上げた。
難なく床に押さえ込んで警察手帳を出す。
途端に男が静かになった。
すぐにサイレンの音が近づいてきて、
見知った顔が飛び込んでくる。
「多紀!」
「ナイフはそこだ」
少し離れたところに転がっているナイフを顎で示した。
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