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初めて彼を見たのは、
東京に赴任してきた翌日だった。
官舎へ帰る途中に立ち寄った大型書店。
文庫本の棚を眺めていると、
子供の泣く声が入り口を潜ってきた。
視線を廻らせれば、
5、
6歳くらいの女の子が若い女性に手を引かれている。
書店のエプロンをつけたその女性が、
女の子の前に屈んだ。
「お母さんとはぐれちゃったの?」
「えーと、
お名前は?」
「苗字、
言えるかな?」
女性店員の質問には泣きじゃくりが返ってくるだけ。
迷子かとそちらに歩きかけた時、
若い男の店員が歩み寄ってきた。
「どしたの?迷子?」
彼の問いかけに女性店員が顔を上げる。
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