第1章

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警官隊に男を引き渡して、 彼を振り返る。 嬉しそうな笑顔で迎えられてひどく腹が立った。 ずきりと自分の手に走った痛みは、 彼の左の掌に滲む血が呼び起こした幻痛だ。 「――あの」 「馬鹿ものッ!」 自分でも驚くような声が出た。 びっくりしたのだろう。 黒い瞳を大きく見開いて彼が硬直した。 「ナイフを持っている相手に、 不用意に近づくんじゃないッ!」 唖然としている彼の手を取る。 ナイフの刃先が掠っただけのようだ。 傷はたいして深くはない。 そこに視線を落とした彼が、 あ、 と目を見張った。 傷を負っていることに、 やっと気づいたらしい。
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