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ポケットから出したハンカチを当てて軽く縛る。
「勇気と無謀は違う」
浅い傷にほっとして力の抜けた自分の指が少し震えていて、
どきりとする。
それを気づかれまいと声を高くした。
「駐車場に戻った時に本部から緊急連絡があって。
慌てて戻って来てみればこれだ。
民間人が危険な真似をするんじゃない。
テレビドラマとは違うんだ。
」
「でもあの」
口を挟んでくる彼を、
何だと睨みつける。
「多紀さんが危ないって、
思ったら……勝手に身体が動いちゃって」
その言葉に、
思わず彼の顔を見返した。
良かった、
無事でとひたりと見つめてくる黒い瞳が――多紀さん、
と呼ばれた名前が、
身体のどこかを波立てた。
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