第1章

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ポケットから出したハンカチを当てて軽く縛る。 「勇気と無謀は違う」 浅い傷にほっとして力の抜けた自分の指が少し震えていて、 どきりとする。 それを気づかれまいと声を高くした。 「駐車場に戻った時に本部から緊急連絡があって。 慌てて戻って来てみればこれだ。 民間人が危険な真似をするんじゃない。 テレビドラマとは違うんだ。 」 「でもあの」 口を挟んでくる彼を、 何だと睨みつける。 「多紀さんが危ないって、 思ったら……勝手に身体が動いちゃって」 その言葉に、 思わず彼の顔を見返した。 良かった、 無事でとひたりと見つめてくる黒い瞳が――多紀さん、 と呼ばれた名前が、 身体のどこかを波立てた。
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