第1章

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強盗傷害の容疑者を書類送検した数日後。 帰宅途中で例の書店に寄った俺は、 入り口で逡巡していた。 あの日、 感情のままに彼を怒鳴りつけたのは明らかにこちらの非だった。 一言詫びなければと思ったが、 何となく顔を合わせ辛い。 店の前でうろうろしている俺を、 若いカップルが不審な眼差しで眺めていく。 意を決して自動ドアをくぐった――のに、 カウンターに彼が居るのを見た瞬間、 足が勝手に方向を変える。 「いらっしゃ――」 彼の声が途切れるのを背中で聞いて、 俺は奥の書架へと向かった。 ――なんでこうなるんだ!
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