第1章

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カウンターから見えない書棚の前に立って、 溜息をつく。 彼が絡むと何故だか思うとおりにいかない気がする。 身体と感情ばかりが先に動いてしまうみたいで……困る。 それでもここまで来たからには、 何もしないで帰るわけには行かなかった。 ともかくきっかけを作ろうと、 書架から本を一冊取る。 「……これを」 棚から抜いた『優しいガーデニング初級者篇』という本をカウンターに差し出した。 「650円です」 応じる彼の方も固い口調。 やはり俺に怒鳴りつけられた事を、 面白くは思っていないのだろうか。 いつも真直ぐに合わせてくる視線がすっと下に外されるから、 唇を噛んだ。
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