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無言で札をトレイに置いた俺の指に、
彼の指先が触れて。
はっと手を握りこむ。
「……1000円お預かりします」
チン!とレジの引き出しが開く音が、
嫌に大きく聞こえた。
「350円のお返しです」
目を伏せたままお釣りを数えた彼が、
レシートと一緒にトレイに置く。
小銭に手を伸ばしながら 、
このままでは何も話せないで終わってしまうと内心焦った。
「……その、
この間は、
すまなかった」
唐突だったろうか。
彼がびくんと顔をあげた。
「……え、
と」
「いきなり、
怒鳴りつけて、
すまない」
彼が何か言うより前に詫びてしまう。
「……いいえ――俺が、
考えなしだったんだし」
黒い瞳が俺を見つめて、
ふわりと緩んだ。
その途端、
強張っていた身体から力が抜けるのが分かった。
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