第2章

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「お邪魔しまーす」 入ってきた彼が、 物珍しげに室内を見回す。 「こちらに来てからずっと忙しくて……まだ荷物を全部解く暇がなくて」 部屋の隅にまだ積み上げたままの段ボール箱に、 青羽の視線がとまるのを見て。 なんとなく言い訳がましい説明をする。 「こっちだ」 リビングから続くサッシを開けて外に出て、 そこに置いた鉢植えを示す。 小さな緑の葉が顔を覗かせている。 「……引越しの荷物の中に種の袋を見つけたから、 蒔いてみたんだが。 なんだかちっとも育たないんだ」 鉢植えの前に屈みこんだ青羽の、 その後ろから声をかける。 「これ、 水やりすぎだと思いますよ。 根腐れ起こしかけてる」 鉢植えの土を人差し指で押して彼が言う。
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