第2章

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手間をかけてすまないと言うと、 気にしないでと笑い返される。 「これで元気になるといいですね」 「……ああ、 そうだな」 そう言うと、 彼の視線が僅かに外された。 その視線が、 窓際のローチェストの上で止まる。 この間、 引越しの荷物から出したばかりの、 写真立て――彼女と写っている、 結婚式の写真。 無言で見つめ続ける彼の横顔に、 心臓が知らない音でどくりと鳴った。 「……きれいな人ですね」 彼がぽつりと呟くように言った。 「写真うつりのせいかな……なんだか多紀さん、 ずいぶん若く見えますね」 「……二十の時の写真だから」 「はたち?」 青羽がびっくりした声を出した。
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