第2章

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もうずっと長いこと、 嵌めていることすら意識していなかった薬指の指輪が、 不意に質感を変えた気がした。 数日後。 青羽のアドバイスが良かったのか、 鉢の中に小さな蕾がついた。 ……彼に報告しなくちゃな。 淡く色づいた蕾に指先で触れながら。 誰よりも彼女を思い出すはずのこの花に、 別の人間が結びついてしまった事に。 罪悪感めいたものを感じずにはいられなかったけれど。 「あ、 いらっしゃいませ!」 書店に行くと、 青羽がカウンターから身を乗り出すようにして声をかけてきた。 ふさふさとした 尻尾をぱたぱたと振っている大型犬を、 なんとなく連想する。
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