第2章

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馬鹿馬鹿しい――彼の行為には何の含みもないのに。 目を上げてみれば、 きっといつもの太陽のような笑顔で見つめているに違いないのに。 そう思って視線を上げた目の前には――笑みなど欠片もない、 黒い瞳。 魅入られたように、 その暗い淵を覗き込む。 その奥に何があるのか……それを見極める前に、 ふっと彼の視線が逸らされた。 「取れましたよ、 髪の毛」 上げられた明るい声に、 はっと意識が現実に戻る。 お腹空いちゃいましたねと言われて、 慌てて立ち上がった。 青羽を連れて行ったのは、 アジア料理がメインのお店。 グルメとやらを自称している同僚に教えてもらった店だ。 彼の気に入るといいんだが。
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