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数日後、
東京には珍しく雪の降った日。
この間の書店に立ち寄った。
トレンチの襟を立てて、
駐車場から入り口までの距離を小走りに駆 ける。
飛び込んだ自動ドアの直ぐ内側に人がいて、
たたらを踏んだら濡れた床で足が滑った。
「――っ」
ぐい、
と肘の辺りをつかまれて。
転びそうになった身体を支えられる。
「すみません!大丈夫ですか?」
顔を上げれば、
腕を掴んでいるのはこの間の男。
まじまじと見つめてくる黒い大きな瞳に、
少し戸惑った。
「あ……えっと、
床、
拭いてて前を見ていませんでした。
申し訳ありません」
「いえ、
私のほうも不注意で……」
大丈夫ですか?と重ねて聞いてくるその胸には、
『青羽』と書かれたネームプレート。
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