第1章

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数日後、 東京には珍しく雪の降った日。 この間の書店に立ち寄った。 トレンチの襟を立てて、 駐車場から入り口までの距離を小走りに駆 ける。 飛び込んだ自動ドアの直ぐ内側に人がいて、 たたらを踏んだら濡れた床で足が滑った。 「――っ」 ぐい、 と肘の辺りをつかまれて。 転びそうになった身体を支えられる。 「すみません!大丈夫ですか?」 顔を上げれば、 腕を掴んでいるのはこの間の男。 まじまじと見つめてくる黒い大きな瞳に、 少し戸惑った。 「あ……えっと、 床、 拭いてて前を見ていませんでした。 申し訳ありません」 「いえ、 私のほうも不注意で……」 大丈夫ですか?と重ねて聞いてくるその胸には、 『青羽』と書かれたネームプレート。
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