【土曜の晩】

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そう言えば… こんな事も有った。 ある時、 課全体をあげての大きな仕事が片付き、私は休日に職場の社員達全員を自宅に招いて『打ち上げ親睦会』を催した。 その日、妻は買い物へと出かけていた。 当日、仕事で頑張ってくれているうちの課の社員全員が私の自宅にやって来てくれて、わいわいと酒を飲みながら楽しいお喋りに花を咲かせ親睦を深めた。 当然、その日は休日である訳だから、皆、職場でのスーツ姿ではなく、ポロシャツやジーパンといった普段着であった。 が… 小林君だけは、ここでも『異彩』を放っていた。 首から何やらジャラジャラとゴールドの鎖みたいなアクセサリー(?)を幾重にもぶら下げ、髪の毛はどうやったのかは知らないが、鬼のツノの様にとんがった『物体』が何本も突き立っていた。 勿論、プライベートでどんな服装やヘアースタイルをしようと個人の自由ではあるが、仮にも上司の自宅を訪れるのに、そんなイデタチは無いのではないだろうか。 ところで… 私の家は妻が嫌がるので基本的に禁煙である。 なので、親睦会で来てくれた社員達には、 「皆、申し訳ないんだが、喫煙する時は中庭に灰皿を用意したのでそこで吸ってくれ」と前もって言っておいた。 しかし、にも関わらず、 小林君は飲み干したビールの空き缶を灰皿代わりにして、居間のソファーに寝転がりながら、スパスパと煙草を吸いだした。 「おい!小林! 煙草を吸うなら中庭で吸えって課長が言ってただろ!」 と、見兼ねた先輩社員の渡辺君に叱り付けられ、 「…ったく!分かりましたよっ!めんどくさい家っすねぇ!」 と、酒に酔った小林君は悪態をつきながら中庭に渋々、向かって行った。 そして… あまりにも戻るのが遅いので、私が気になって中庭に見に行ってみると… 何と!小林君は、中庭で大の字になって高イビキをかいて寝てしまっていたのだ! と! ちょうどその時、帰宅してきた妻がその彼の姿を見て… 恐怖の悲鳴をあげたのは言うまでも無い事である。 「全く… まさに『トンデモ部下』とは、彼の事だな…」 私は、小林君の事を思い出しながら、再びため息をついて顔をしかめた。
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