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『お前は本当は分かっているんだろう?
この世は腐敗していて、それが普通で。
お前みたいに、あちらの世界をも感知して苦しむ者は少ない。
故に御前は大衆から理解されない。
人間は皆、霊感をもって生まれてくる生き物だ。
だが、人間は本来備わる霊感を閉じて醜さも異常さも見ようとせずに自らを守り、蓋をする。
見えない故に、過ちを犯す。
感じる事のできる者達だけが苦しむ。』
雪華は紫乃の髪を優しくかきあげた。
みすずと同じ魂を持つ存在がお前以外に現れたら、アキは果たしてどうするかな。
「どういう…こと?」
『みすずの魂を宿して転生したのは1人だけではない、ということだ。
そのうちわかる。
御前は失敗作なのだから。』
雪華は紫乃に背を向け、光の先に歩き出した。
『アキが本当にみすずを愛しているならば御前ではなく、御前の魂と対となるツインソウルの娘を選ぶだろう。』
「失敗作…ね。……」
紫乃は自嘲気味に微笑んだ。
自分で口に出して笑えてくる。
だって、それは事実なのだから。
「あれで、私を引きずり落とすつもりかしら…。
無駄なあがきね。
今さら私が成功者だなんて微塵も思ってない。
このアザが証明だ。
それにしてもまだ抵抗するなんて…雪華もかなりしぶとい怨霊ね。」
わざわざアキやイツキがいない頃を見計らって来るのだ。
そして、闇へと引きずり込もうとする。
此処は夢の中。
雪華が私の夢の中に来れるということは…。
紫乃は深い溜息をついた。
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雪華は紫乃の顔を思い出して心底笑いたい気持ちで一杯になった。
(紫乃…御前だけ甘やかされて、皆んなから守られて、汚れずに綺麗な場所に居るなんて赦さない。
こちらに引きずり落としてやる。)
雪華は再び眠りについた。
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