よく寝る上司

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僕は、浅井 遥の事件の報告書を作成していた。 この事件は、何とも言えない悲しい事件だと感じていたが、そんな余韻に浸る間もなく新たな事件が発生した。 時刻は13時30分、警察署管内の銀行で銀行強盗による立てこもり事件が発生し、僕は島津さんに連れられて急遽現場に入った。 犯人の数は1人、銃とナイフを所持していて、人数が正確に把握できていないが、中では銀行員とお客が人質となっている。 犯人への説得が続いているが、犯人はまったく説得に応じる気がなく、事件発生から約2時間が経過しているとのことだった。 この膠着状態はさらに続き、18時30分をまわった頃、犯人から食料と水の要求があった。 この犯人からの要求で、食料と水を持ち込むことになったが、島津さんが自分が持っていくと言い出したので、自分も同行すると願い出た。 島津さんが、 「若林、危険だからよせ!」 と言ってくれたが、僕は、 「いいえ、僕も行きます!  そもそも1人じゃ持てないでしょう!」 と強い口調で発言した。 お弁当とおにぎり、サンドイッチ、ペットボトルの水など、犯人と人質の銀行員、お客の分も含め用意した。 食料と水は、思ったとおり島津さんと僕の2人の両手で、やっと持つことができた。 島津さんと僕は、銃を別の刑事に預けて、犯人に武器は何も持っていないことを伝え、銀行の中に入った。 銀行の中に入って、食料と水を犯人、銀行員、お客に配り、僕は外に出ようとしたが、島津さんが僕に小声で、 「犯人が持っている銃は、おもちゃだ!」 と教えてくれた。 犯人を見ると、右手に包丁、左手に銃を持っていて、少し興奮ぎみで、そわそわと落ち着かない様子に見えた。
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