よく寝る上司

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島津さんは救急車で病院に搬送され、緊急手術が行われた。 救急車に同乗して病院に入った僕は、落ち着いて座っていることができなくて、手術室の前の廊下で、うろうろとしていた。 どのくらい時間が経ったのかわからないが、手術室から医者が出てきて、島津さんの状態を説明してくれた。 「思ったより傷口は深くなかったし、急所も外していたので、命に別状はありません。  ただ、出血が多かったので輸血して、今は落ち着いた状態です。  麻酔がきいているので、当面眠り続けると思います。」 僕は医者に、 「ありがとうございます。」 と丁寧に頭を下げて、お礼を言った。 ほどなく島津さんがベットに寝たままの状態で手術室から出てきて、そのまま病室に運ばれた。 病室に運ばれた島津さんの顔をまじましと見つめると、当然のことながら…目をつむって寝ていた。 (仕事中いつ寝てもいいから、今は寝ないで早く目を覚まして!) と、僕は心の中で叫んでいた。 島津さんのそばを離れたくない僕は、ずっと病室にいて、椅子に座ったままうとうとと寝てしまった。 夜が明けて、僕は、島津さんの声で目を覚ました。 「犯人は、どうした?」 と、いつものように呑気な質問をしてきたので、僕は、 「捕まりましたよ!」 と答えた。 「そうか、捕まっちまったか?」 と島津さんが意味ありげに言ったので、僕は、 「何故ですか?」 と質問した。 すると島津さんが、 「どうせなら、逃がしてやりたかった。」 と発言したので、僕は、 「ダメですよ!  刑事が犯罪者を逃がすなんて…」 と反論した。 島津さんはずっと天井を見つめたまま、少し考え込んでいたようだが、そのうち、 「若林、俺は刑事である前に、人間でいたいよ!」 と自分の正直な気持ちを打ち明けてくれた。
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