よく寝る上司

14/15
前へ
/15ページ
次へ
1ヶ月程して、島津さんは無事退院して、職場に復帰した。 島津さんは、銀行強盗の犯人のことが気になるらしく、留置場に面会に行っていた。 また、犯人から母親の状態を聞き出して、母親の入院している病院にも足を運んだようだ。 僕は、島津さんは犯罪者のために、なんであんなにも一生懸命になるんだろうかと感じていた。 ある日、仕事帰りに電車に乗り込もうとしたとき、以前スリと間違えて逮捕しそうになった男性に出会った。 僕は、男性に声をかけて、島津さんとの関係について質問した。 すると、その男性は、以前スリで逮捕されて刑務所に入ったが、刑期を終えて出所すると、島津さんが声をかけてきたという話だった。 島津さんは、その男性のために仕事を探したり、困ったときに助けてくれたりしたとのことだった。 その男性は、 「おやじさんへの恩は、一生忘れません。  今細々と幸せな生活を送ることができているのは、おやじさんのおかげです。  本当に、ありがたいことです!」 と話してくれた。 後日、島津さんに、この男性と会った時の話をしたら、 「そうか、元気に頑張ってくれているんだな!」 と嬉しそうに答えてくれた。 島津さんに、銀行強盗の犯人をどうするのか質問すると、 「あの男も、根は悪いやつじゃねぇ!  目を見りゃわかる。  あの男の目は、一点の曇りもなかった。  俺に何ができるかわからんが、何か助けてあげたいと思っている。」 と答えてくれた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加