よく寝る上司

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そろそろ帰宅しようかと思っていたある日の18時30分、警察署管内で人が死んでいるという通報が入り、僕は島津さんに連れられて急遽現場に入った。 島津さんと僕が現場に到着したのは19時頃、現場は女性の独り住まいの賃貸マンションの202号室で女性が床に倒れていた。 通報してきたのは、この女性の恋人の男性で、今日大学に来なかったし連絡も取れなかったので、心配してマンションを訪問して部屋に入ったら女性が倒れていて、あわてて110番通報したとの話だった。 どうやって部屋に入ったのかと聞くと、合鍵を持っているという話だった。 遺体の女性は「浅井 遥」、大学4年生で、通報してきた恋人の男性は「樋口 直樹」、同じ大学の4年生という話だった。 部屋は、荒らされた様子はなく、女性の遺体にも外傷はないようだ。 どうも毒物を服用したことが死因のようで、テーブルの上に赤ワインのグラスが1つ倒れていた。 島津さんと僕は、手袋をして部屋に入り、中の様子を探索した。 こんな時、僕は何をしたらいいのかわからなかったが、何か部屋に慰留物がないかどうか、部屋の中をうろうろと見回っていた。 僕は、こんな時、島津さんは何をしているのかと思い、島津さんを見ると…目をつむって寝ていた。 (あれ、また寝てる…) 僕は島津さんに近づいて小声で、 「島津さん!」 と声をかけて呼び起こした。 すると島津さんは、 「犯人は、どうした?」 と呑気な質問をしてきたので、僕は、 「今、現場検証中ですよ!」 と返事をした。 すると島津さんは、家具の上に置かれたフォトフレームの写真をじっと見ているようだった。 写真には、遺体の女性と通報してきた恋人の男性が、楽しそうな笑顔でツーショットで写っていた。 次に島津さんは、女性の遺体をじっと見つめながら何か考えているようだったが、僕には、ワインを飲んだ女性がそのまま横たわっているようにしか見えなかった。 通報した恋人の男性の話では、最近女性は、なかなか就職が決まらず、相当悩んでいたようだという話だった。
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