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遺体解剖の検視結果の報告を受けて、島津さんは恋人の樋口 直樹のアパートを訪問して署まで同行してもらい、事情聴取を行うことになった。
樋口 直樹は、素直に応じてくれているようで、何の抵抗もなかった。
まず、島津さんが浅井 遥との関係について質問すると、大学3年生の頃、同じゼミになったことがきっかけで付き合い始めたという話だった。
島津さんは、アリバイを確認するために、樋口 直樹が通報してきた前日の夜の行動について聞き出すと、樋口 直樹は自宅に独りでいたからアリバイは成立しないと言い出した。
この点について島津さんが、疑問点を問いただした。
「前日の18時頃、君が浅井 遥さんと一緒にマンションに入るところが防犯カメラに写っているんだよ!
そして23時頃、君が1人でマンションを出ていくところが防犯カメラに写っているんだよ!
これは何故かな?」
樋口 直樹は、言葉に詰まってしまったようだ。
続けて島津さんは、
「食器棚にあったワイングラスの下に敷いてあるシートが若干濡れていたよ!」
と発言した。
僕には、この話しの繋がりが理解できなかった。
島津さんは、静かな口調で樋口 直樹に語りかけた。
「何か隠しているね!
隠し通せたとしても、このことは、君の心の中にずっと残るよ!
私の口から言わせないで、君の口で全ての真実を話してもらえないか?」
すると、樋口 直樹は少し考えた後、島津さんの顔をまっすぐに見ながら話しを始めた。
「実は僕は、遥とは別に好きな女性ができて、その日は、遥に分かれたいという話をしました。
すると、遥がワインを飲もうと言い出して、2人でワインを飲んだのです。
すると、遥が急に苦しみだして、その場に倒れたのです。」
島津さんが、
「そのワインを出したのは誰?」
と質問すると、樋口 直樹が答えた。
「遥です。
台所でワイングラスにワインを注いで、テーブルまで持ってきてくれました。」
この時、僕にはやっと話の繋がりが見えてきた。
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