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少し沈黙の後、樋口 直樹が話し始めた。
「僕は、自分が疑われると思って、怖くなって…
自分がここにいた痕跡をなくそうと、自分のワイングラスを洗って、食器棚に置きました。
そして、部屋を出ました。」
島津さんが、その後の行動のことを質問すると、樋口 直樹は続けて話し始めた。
「僕は慌てていたので、遥は死んだのかどうか、はっきりとわからない状態で部屋を出ました。
僕は、遥が部屋で倒れていることを、何らかの形で誰かに知らせなければならないと思いました。
そこで翌日は、普通に大学に行って、その帰りに遥のマンションに行き、僕が倒れている遥を発見したことにして通報しました。」
島津さんは、納得したような表情で、樋口 直樹に向かって話し始めた。
「そのようだね!
浅井 遥さんは自殺のようだけれど、自殺を考えたのは、もっと深いわけがあったようだよ!
君は、気が付いていたのかな?」
すると樋口 直樹が、
「僕が別れ話をしたからでは、ないのですか?」
と発言したので、島津さんは、一呼吸置いて静かに話し始めた。
「君から別れ話をされたのがきっかけであることには、間違いないと思うけど…
浅井 遥さんは、妊娠していたようだよ!
たぶん君との間にできたのだろう!」
樋口 直樹は、このことを知らなかったようで、大きなショックを受けたようだった。
そして、みるみるうちに目から涙が溢れ落ちてきた。
島津さんは、樋口 直樹を諭すように話をした。
「浅井 遥さんは、君と一緒に死ぬこともできたはずだと思うけど、なぜ自分だけ死ぬ道を選んだのだろうね?
結果的に、浅井 遥さんは自殺だとしても、君の罪は重いと思うよ!」
とうとう樋口 直樹は、声を出して泣き出してしまった。
結局、この事件は、浅井 遥の自殺ということで解決となった。
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