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丸い水槽の縁に沿って、山崎が浮かべるパラフィンの評本切片を、私が何周も追いかけるようにマウントしていると、突然、山崎が手を止めた。 どうしたんだろ? そんな顔をして動きを止めてしまったからか、 「そこまでやったら一回、水、変える」 そう言って、薄切台装置の刃を外して、保管箱へ収めた。 「わかりました。」 確かに、よく見ると水槽には小さなホコリやパラフィンの屑のような粉が浮いていて、このままでは標本にゴミが入りかねない。 山崎が、標本を浮かべる時には、水槽に向かって、ふぅーと、息を吹きかけていたのは、そのゴミの上に浮かべないような技術者の技だったのだろう。 手を止めた山崎の横で、残り10枚ほどの切片もマウントするため、作業を続ける。 その間、山崎は、席を立ち、隣でマウントした後の切片の回収作業を始めた。 さっきまでの、私がマウントとセットで行っていた作業だ。 マウントした後、40℃程度の温かい台の上に乾かしていたプレパラートを、保管箱に一枚ずつ立てて仕舞う、数日、剥がれないように乾燥するまで保管して、そのあとは、ようやく染色へと進む事ができる。 あと、残り4枚のところで、私の手からマウントしたばかりのプレパラートが、水槽の中に滑り落ちた。 「あ!…」 手から離してしまった瞬間叫ぶも虚しく、 ポチャン…カラン…、 と、ガラス音が鳴った。 うまく出来ていたからって、調子に乗って、速度をあげたら、もうこうなる。 慌てて山崎の顔を見て頭を下げて謝罪する。 「すみません!」
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