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無事に、残りのマウントを終えると、水槽を洗って、また綺麗な水を汲み直した。 だけど、先程の動揺がまだ消えない。 わざとじゃないし、大丈夫だって言われても、大事な標本を手から滑らせてしまった失敗は、許し難い単純ミスだから。 次は気をつけよう、 そう意識して防ぐしかないから、またやってしまわないか不安になる。 いつもなら、 「何やってんだ!」 って睨み利かせて怒っても良さそうなのに。 怒られずに、大丈夫って、優しく頷かれるから、余計に申し訳ない気持ちになるのかもしれない。 そのせいが、さっきから動揺だけではない胸の痛みが苦しい。 なんで? なんで怒らない? 再び、椅子に座って薄切を始めた山崎の顔を覗き見ると、表情からは、何を考えているのかは読み取れなかった。
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