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どうしても、気になって聞いてしまった。 「中川が真剣にやってるから。」 「え?」 なんか、初めて認めて貰えたような言葉を言ってくれ たことに、目を丸くした私に、 「怒ったところで、余計ミスすんだろ。何度もミスは許されない本番だからな。」 目を細めて意地悪顔で、言われたので、 「…以後気をつけます。」 と答える。 「言ったところで改善する見込みのないことに、言うつもりはないし、ミスをなくすのは経験しかないから。 俺が中川に怒るときはクダラナイような事した時だけだと思うけど?」 「へへっ。」 っと思わず笑ってしまった。 もしかしたら、私はこの男を勘違いしていたのかもしれない。 横柄な態度は、私が仕事に対して真剣に、向き合って無かったことを、きっと分かっていたからだ。 配属先が希望の部署じゃなかったからと、最初仕方なくやっていることにも、気づいていたのかもしれない。 それでも、強く怒られる度に、興味をもって真剣に学ぼうと気持ちを切り替えてしてきたところで、真剣なのを、理解してくれた。 杉山さんにも教えられたように、山崎の与える仕事には、ただ雑務をやらされてるんじゃないんだって、ちゃんと意味があるんだってことも気づいたから、 それに答えようと励んできた。 それを分かってくれていた。 そっか、悪いのは、私だったんだ。 「午後も、続き、まだまだだから、しっかり食って休んどけ。 飯にしよ、腹減った。」 そう言って、薄切室を出て行く背中を追いかけて、 山崎の優しさを知って、嬉しさで口もとが緩んだ。
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