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とはいえ、送水管に使用する輸入ゴムはまだまだ貴重な代物。それゆえ、節約のため水芸を披露する華子の背丈に合わせて作られていたのだ。
それなのに、またもや華子は、それをうっかり忘れてしまっていたらしい。
「おやおや、嬢ちゃん。また聡吉を困らせているようだねぇ」
「聡次さん! もうお医者様に診て貰ったの? いつも、ごめんなさいね。私がうっかり結び方を間違えてしまったものだから……」
「嬢ちゃんのせいじゃありませんよ。俺が嬢ちゃんのうっかりを忘れていたから、こうなっちまっただけです。それより、水芸の練習は進んでいますか?」
そそっかしい上にせっかちな性格が災いし、昼間の公演で一番弟子の聡次に怪我を負わせてしまったところだ。『縄抜けの術』の最中にうっかり華子が縛り方を間違えて、いつもように縄が抜けなくなってしまった。
そこで、無理やり縄を引き千切ろうとした聡次は、商売道具でもある大事な手指を負傷してしまったのだった。
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