1.なるほど、私は死んだわけだ

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  男に捨てられた女はそれこそ掃いて捨てるほどいるだろう。だからそのことに関しては別にどうでもいい。 ごみくずのように捨てられても、たとえクリスマス当日に捨てられようとも、ありふれた不幸はそこで終わる限り大したことじゃない。  ただ、私があの男を許せないのは私をただ捨てたわけではないことだ。  とりあえずこのような状況になった理由について。  一つには私の家庭環境が大きく影響している。  私の母は私が十五の時にあっけなく事故死した。夫のDVを腹にすえかね、真夜中に家を飛び出し、ひたちなか市の実家目指して走っていたところ、常盤自動車道で無残な事故に巻き込まれたのである。 我が家の数少ない財産の一つであったダイハツのミラも巻き込まれた。  彼女の夫、私の父はひどい酒乱でしょっちゅう私や母に暴力をふるっていた。 事故ではあったが、父から逃げる途中での出来事だったのだから母の死は百パーセント父の責任である。 そのようなことから私はこの父を母の死後三年間呪い続けていたのだが、三年目にしてようやく効き目があったと見えて、私が高校三年の時肝硬変で亡くなった。  はれて天涯孤独の身となった私を引き取ってくれたのは父方の親戚でも母方の親戚でもなく、高校の時の彼氏だった。  彼の名をNとしよう。 いや、やっぱここはうらみを込めて本名にする。彼の名前は並木秀。並なのか秀でているのかわからないような名前だが、言おう、彼は人間として最低だ。  彼と私はいわゆる幼馴染という奴である。 同じアパートの隣どうしの部屋で半年も間を開けず生まれればそれは公園デビューも一緒になろうし、同じ幼稚園、小学校に行き、結果高校まで同じということは別に変なことではない。 そして小学校高学年からだんだん口を聞くのが気まずくなり、そして相手のことを異性として意識しだすようになり、中学卒業あたりを期に付き合い始めるなどと言うことも特段変わったことではない。 少女マンガやラノベとかではありがちな展開だ。
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