1.なるほど、私は死んだわけだ

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 高校卒業とほぼ同時に父が死に、私はそれまで家族で住んでいた安アパートから追い出された。 父の財産整理をしてくれた親戚に突きつけられた残酷な現実(父の残した遺産、は予想どおりマイナスだった)と、「天涯孤独」という言葉の思いもよらぬ大きさにぎゅうぎゅう押しつぶされながら泣いていた私に、彼、並木秀は「僕と一緒に東京へ行こう」と言った。  その時、彼はたまたま東京の大学へ進学が決まり、一人暮らしをすることになっていた。  親公認の仲などと言うが、男のほうの親は心配などする必要もないわけだし、こっちの親戚は父の問題でごたごたしていた。 そのため、私のことを心配するものなど1人もおらず、結果堂々と同棲などしていてもまったく問題なかったというわけだ。  もちろんその当時の私は並木秀のことが大好きだったわけで、好きな人と一緒に暮らせるというだけで、いたいけな少女の胸のドキドキはザンビアの祭かと思われるほど激しかった。  浮かれ切ってアパートのファニシングに工夫を凝らしたり、料理の本などを見て新しい料理を覚えてみたり、そりゃもう楽しかった。    居候と言うわけにもいかないので秀が学校でいない昼間はずっとバイトに入り家計を助けた。  バイトから帰れば掃除洗濯晩御飯。まあ、秀の学校はだいたい四時には終わるので洗濯は秀がやってくれていた。  晩御飯は一緒に作るし、夜はテレビを見て笑ったり、学校の話を聞いたりと、秀の奨学金のおかげで七十年代同棲時代のつましさこそないものの、まさに理想の同棲生活といえるものがそこにはあった。  秀の様子がおかしくなったのは同棲生活も三年になろうというころ。 まず彼は洗濯をしなくなった。  学校から帰ったらずっとゲームをしているらしく、私がバイトから帰ってきても「おかえり」も言わず、パソコン画面から目を離さない。   結果晩御飯も私一人で作るようになった。
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